発達性協調運動症(DCD)を耳にされたことがありますか?
手と手、目と手、足と手など、複数の身体部位を協力させて行う運動が著しく困難な障害のことです
キャッチボールが苦手であったり、消しゴムを使うと紙が破れてしまうなど
日常生活での運動に困難がみられます
今回は、発達性協調運動症(DCD)についてご紹介します
なんだかうちの子「不器用」「運動が苦手」と感じる方は、ぜひ最後までお読みください
発達性協調運動症(DCD)とは?
発達性協調運動症(DCD)は、手足の動きなど身体の動きをコントロールして行う協調運動が
年齢相応に行うことができず、日常生活に支障が出る場合に診断されます
例えば、物をつかんだり、はさみや刃物などの道具を使うことが不正確である、
書字に困難が生じるといったものが、日常生活に困難さがある状態です
協調運動とは、手と手、手と目、足と手などの個別の動きを一緒に行う運動のことです
例えば、私たちがキャッチボールをする時、
ボールを目で追いながら、ボールをキャッチするという動作を同時にしています
ほかにも、縄跳びをする時、ジャンプする動作と、縄を回す動作を同時にしています
このような運動を協調運動といいます
運動は大きく分けて、粗大運動と微細運動(巧緻運動)があります
人間は、さまざまな感覚器官から得られた情報をもとに、初めは姿勢を保つことや寝返りといった
粗大運動を習得し、その後に段階を踏みながらより細かい微細運動ができるようになります
粗大運動と微細運動(巧緻運動)
◆ 粗大運動
感覚器官からの情報をもとに行う、姿勢と移動に関する運動です
寝返り、這う、歩く、走るといった基本的な運動は人間が先天的に持っている粗大運動能力です
一方、泳ぐ、自転車に乗るなどは、環境的な影響や学習によって身につける
後天的な運動能力といわれています
◆ 微細運動(巧緻運動)
感覚器官や粗大運動で得られた情報をもとに、小さい筋肉(特に指先など)の調整が必要な運動です
モノをつまんだり、ひっぱったり、指先を使って細かな作業をいい、
例えば、絵を描く、ボタンをかける、字を書くなどの運動があります
成長と共に、粗大運動から、より細かい微細運動ができるようになります
発達性協調運動症(DCD)のある人は、
粗大運動や微細運動、またはその両方における協調運動が同年代に比べぎこちなく、
遅かったり、不正確だったりします
子どもによって、乳幼児期の粗大運動には全く遅れや苦手はなかったものの、
幼稚園や小学校に行くようになり、微細運動を必要とする場面が増え、
微細運動の困難さが目立ってくることもあります
発達性協調運動症(DCD)のある子どもの困りごとをチェック
発達性協調運動症(DCD)のある子どもの年齢別の困りごとの傾向をど紹介します
発達性協調運動症(DCD)かどうかの判断は、
協調運動が本人の年齢や知能に応じて期待されるよりも著しく不正確なのか、
困難であるかどうかが重要なポイントとなります
しかし、幼いほど、得意な運動と困難な運動は子どもによって大きく差があるため、
以下の例に当てはまるからといって、必ずしも発達性協調運動症(DCD)ということではありません
お子さんの様子を見つつ、気になるときは専門機関に相談してみましょう
乳児期(1歳未満)
乳児期は、基本的な粗大運動を学び、獲得していく段階です
また、子ども一人ひとりの運動機能獲得のスピードは違います
できること、できないことも個人差が大きい時期です
そのため、苦手なことがあっても心配する必要がない場合も多いです
以下に乳児期に共通して見られる傾向をご紹介します
- 母乳やミルクの飲みが悪い
- むせやすい
- 離乳食を食べるとむせる
- 寝返りがうまくできない
- ハイハイがうまくできない
幼児期(1歳以上6歳未満)
特に5歳を過ぎると、運動能力の個人差が縮まってきます
この時期に発達性協調運動症(DCD)と診断される場合が比較的多いといえます
発達性協調運動症(DCD)のある幼児は以下のような
運動に不正確さや、習得の遅れ、困難さが見られることがあります
- ハイハイや歩行がぎこちない
- お座りがうまくできない
- 靴ひもを結べない
- ボタンをはめるのが苦手
- ファスナーを上げられない
- 転んだ時に手が出ない
- 平坦な場所で転ぶ
- トイレで上手にお尻をふけない
小学生(6歳以上13歳未満)
小学校に上がると日常生活、学習生活でより複雑で繊細な動作を求められる場面が増えます
そのため、微細運動での協調運動障害が顕著にみられ、不器用さが目立つことがあります
発達性協調運動症(DCD)のある子どもは以下のような
運動に不正確さや、習得の遅れ、困難さが見られることがあります
- 模型を組み立てたりするのが苦手
- ボール遊びが苦手
- 字が汚い
- 文字をますの中に入れて書けない
- 階段の上り降りがぎこちない
- 靴ひもを結べない
- お箸をうまく使えない
- 文房具を使った作業が苦手(消しゴムで消すと紙が破れる、定規を押さえられずにずれるなど)
- 自転車に乗れない
発達性協調運動症(DCD)は治せる?
作業療法
子どもの作業療法は、主に遊びなどを通して、複合的な動作をできるようにしていくものです
運動、日常生活、学習などの動作をスムーズに行えるようにするために、
基本的な動作に加え、動きと動きの統合が必要な協調運動への支援を行います
一つひとつの行動の統合が苦手であることが分かっているので、
作業療法は動作の困難さの改善に効果があるといわれています
理学療法
高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、
運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる
治療法です
特に運動による理学療法は発達性協調運動症(DCD)の改善に役立つと言われています
理学療法士が行う運動を使った療育では、日常生活で必要な運動、行動を訓練し改善していきます
家庭できること
家庭でサポートを行う場合は、
「こうするべき、こうあるべき」という先入観を持たずに子どもと一緒に楽しみながらやること
あくまで遊びの中で取り入れ、「訓練」という位置づけにしないことが長続きの秘訣です
家庭で見られる困りごとの例としては、以下のような例があります
- 手先がうまく使えていない
- 正しくお箸の使い方を何度も教えたけれど、なかなかお箸をうまく使いこなせない
- 服のボタンをうまくはずしたり、かけたりすることができない
- 文字を書くときに極端に筆圧が弱い、強い
上記のような困りごとに対して、考えられる不器用さの原因としては、
- 手の筋肉の動きをうまく制御できない
- 手元に注意が向いてない
- 手の動きと視覚の情報の連携が取れていない などがあります
これらを踏まえたうえで、
手で何かを握る経験や、握ったあとの状態を把握する機会を増やすことにより、
手の筋肉に入れる力の制御を学ぶことができ、つまむ機能や握る機能が育っていきます
具体的に家庭でできることは、
- ブランコやアスレチックで遊び、どのくらいの力で自分の体重を支えられるかを体験しながら学
- コイン遊びを通して、コインを握る、つまむ、入れるという動作を経験する
- いろんな指でコインをつかむことで指の力の入れ加減を学ぶ
- 粘土で遊び、粘土の形を変形させるなど、細かい作業を行うことで、感覚の加減を学ぶ
ここで紹介した方法はあくまで一例であり、ほかにもさまざまな方法があります
また、家庭取り組みをしていても、すぐに効果が表れるとは限りません
ゆっくり時間をかけて、楽しみながらやっていきましょう
まとめ
発達性協調運動症(DCD)は、ただ不器用なだけだと済まされる場合も少なくありません
しかし、発達性協調運動症(DCD)のある子どもが見過ごされ、
必要な支援を受けられないままでいると、その子どもが集団に適応することが
困難になることもあります
たとえば、運動能力を中心とした遊びは、子どもたちの社会で周囲との関係を構築するために
重要な役割を果たします
また授業で運動課題に取り組む場面では、その子ども自己肯定感を下げることがあるかもしれません
お子さんが発達性協調運動症(DCD)かどうか心配な場合は、
早めに相談機関に相談し、必要に応じて専門家の支援を受けながら、
家庭でできる工夫を行っていきましょう
お子さんが楽しめるペースや方法で、できることを少しずつ増やしていけば、
自信にもつながります
もし、この記事を読んでわからないことがあれば
ばらの公式LINEよりご相談ください
それではまた、お会いしましょう!
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